一般に ”脂質” と言えば悪者の印象が強いのではないでしょうか。血中の中性脂肪の増加は血管を詰まらせる原因となったり、内臓脂肪の増加は糖尿病発症のリスクを上昇させたりします。しかしながら脂質は、身体の構成要素として、また生きる上でのエネルギー源として非常に重要な役割を持っています。
脂質は1g当たり9kcalの熱量を持つ栄養素です。水に不溶で、有機溶媒に溶解する化合物として定義されます。この脂質は、構造によって単純脂質、複合脂質、そして誘導脂質の3つに分類することができます。
・単純脂質…グリセロールと脂肪酸が結合したもの。一般的に知られているものとしては中性脂肪があり、食べ物に最も多く含まれている脂質です。ヒトの重要なエネルギー源として利用され、体脂肪として貯蔵されたり、血中にも存在します。ヒトの体脂肪(脂肪組織)は20%が水分であるため、食事から摂取する脂肪(油)とは異なり、1g当たり7.2kcalとして計算されます。
・複合脂肪…グリセロールと脂肪酸に加え、リン酸、糖類、窒素化合物などが結合したもの。複合脂質の1つであるリン脂質は、水になじむ性質(親水性)となじまない性質(疎水性)のどちらも持ち合わせていることから、細胞膜の主要な構成要素として利用されています。
誘導脂質…単純脂質や複合脂質が加水分解されることで生じたもので、脂肪酸、コレステロール、そしてステロイドなどがこれに当たります。組織の構成、エネルギー源としての利用のほか、ホルモンをはじめとする生理活性物質としてのはたらきを持ちます。
運動時のエネルギー源と言えば、まず糖質を思い浮かべますが、脂質も重要なエネルギー源であるということを忘れないでいただきたい。脂質は糖質と比較して大きなエネルギーを生み出すことに加え、生体内での貯蔵量も糖質の20倍近くあります。
運動時のエネルギー基質利用は、運動の強度に依存することが報告されています。最大酸素摂取量の25%(ゆっくりな歩行程度の運動)や65%(ジョギング程度の運動)ではエネルギー基質として脂質の利用割合が高いのに対して、85%(激しく息が切れるほどの運動)では糖質の利用割合が著しく上昇することが分かっています。
一般的には、最大酸素摂取量の50~60%強度を境にして、これより低いと脂質利用が優位であり、これより高いと脂質利用が優位になるとされています。
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